初心者にとってマザーボードは自作PCのパーツ選びで最も難しいものの一つかもしれません。
同じCPUが使えれば全部同じじゃないかと思われる方もいると思います。
同じチップセットでも値段は1万円から10万円までピンきりのマザーボードの選び方を分かりやすく解説し、自分に必要なスペックをもつ最もコスパの良いマザーボードが選べるようにガイドします!
マザーボード選びの10のポイント
気をつける必要のあるポイントを重要なものから順番に並べました。
- CPUソケット
- メモリスロットの数
- 拡張スロット(M.2、PCI Express 3.0やSATA)の数
- フォームファクタ(サイズ)
- チップセット
- USB3.0やthunderbolt3などのインターフェイス
- SLI / Crossfireに対応しているか
- VRMフェーズ
- オーディオチップ
- 無線LAN
同じCPUが使えるマザーボードで10倍もの価格差が生まれるのは、
- 拡張性(複数のグラボや8枚のメモリ、USB3.0の数など)
- 熱処理(VRMフェーズの数や水冷)
が大きなポイントで、
他に細かいところでは、無線LANの有無、音質なども値段を左右します。
そもそも自分が想定したパーツが使えるかどうかを左右するポイントは次の6個です。
- CPUソケット
- メモリスロット
- M.2スロット
- PCI Express
- SATA
- チップセット
CPUソケット
マザーボードを選んでから、CPUを選ぶ方はほとんどいないと思いますので、CPUが決まっているとしましょう。
その場合使いたいCPUのCPUソケットも分かります。
CPUソケットは、物理的に形がそれぞれ異なっているため、CPUソケットが対応していないマザーボードを選んでしまうとCPUがそもそも刺さりません。
CPUソケット名はIntelであればLGAからはじまりその後数字が来ます。
LGAとはLand Grid Arrayの略です。その後の1151や2011といった数字はピン(接点)の数になります。
LGA2011-v3などと最後にバージョンが書かれている理由は2011個の接点があるCPUでも新しくなるにつれて、後方互換のない設計になってしまい、仕方がなく末尾にバージョンを記載するようになったからです。
そのため異なるバージョン間では互換性がありません。
マザーボード側の対応ソケットにバージョンが記載されていない場合もあるので、チップセットで対応しているか判断する必要があります。
IntelとAMDではCPUとマザーボードの関係が正反対になっています。
Intelではマザーボード側にピンがあり、CPU側の電極は平らになっています。
AMDではCPU側にピンがあり、マザーボード側にはピンが刺さる穴が並んでいます。
ちなみにAMDのCPUとソケットの接続方式をPin Grid Array(PGA)と呼びます。
メモリスロット
マザーボードの大きさが小さい(フォームファクタがMini-ITXなど)ほどメモリスロットの数は少なくなります。
もし4枚のメモリを使用したい場合は4つメモリスロットが必要になります。
新しいマザーボードを購入する場合はDDR4対応のものがほぼ100%ですが、中古のマザーボードを購入したり、使い回す場合はDDR4に非対応の場合があります。
DDR4やDDR3, DDR2などはメモリの規格であり数字が大きいほど新しく、低電力で速度も速くなっています。
M.2スロット
SSDにはM.2に接続する小さくて薄いタイプのものと、ハードディスクのような2.5インチサイズのものがあります。
2.5インチサイズのものはSATA接続になりますが、M.2に接続するSSDではM.2スロットが必要になります。
安いマザーボードだとM.2スロットがそもそもなかったり、1つしかなかったりします。
複数枚のM.2接続のSSDを使いたい場合は必要な数のM.2スロットがあるマザーボードを選ぶ必要があります。
NVMe接続と呼ばれる高速なSSDを用いる場合はM.2スロットが必要になります。
PCI Express 3.0、4.0(PCIe 3.0、PCIe 4.0)
グラフィックカード(GPU)を使う場合は、PCI Express 3.0x16(もしくはPCI Express 4.0x16)のレーンが必要になります。
ごく一部の安いGPUではPCI Express 3.0x8で大丈夫なことがあります。
サウンドカードやインターフェイスカードではPCI Express x1が使用できます。
高いマザーボードではPCI Express 3.0x16が4つや5つあり、複数のGPUを使用することができます。
SATA(Serial ATA)
SATAはPCIeと比較して低速な接続で安いSSDやHDD、DVD/BDドライブと接続する際に使用します。
安いマザーボードでは4ポートほどしかないため、多くのHDDを使用する予定がある方などは、気をつけてください。
一般的には6ポートあります。
最新バージョンではSATA 3.0で6Gb/s(750MB/s)の速度が出ます。
チップセットとは
マザーボードは、CPU、GPU、メモリー、ストレージ、USBポートなどの間のデータのやりとりのハブとなっています。
チップセットは、このデータのやりとりの管理を行うマザーボードの中心的なICチップです。
Z390やX570、B450など表記がチップセットを表しています。
かつては、このやりとりをすべてマザーボードで行っていましたが、CPU、GPU、メモリーの間の高速なデータのやりとりは、CPUが担当するようになっています。
そのため現在ではチップセットの管理しているデータのやりとりは、CPUとオーディオチップ、ストレージ、USB、LANの間くらいになっています。もちろんチップセットとCPUによって細かい違いがあり、第3世代RyzenなどのハイエンドのCPUではCPUとUSB3.2が直接つながっています。
チップセットの違いで何が変わるのでしょうか?
答えは、
- PCI Express レーン数
- 最大メモリ容量
- USBポート数
- 複数のGPU接続可能か(SLI / CrossFire)
- メモリのオーバークロック
です。
しかし、上の4つは他のスペック情報で分かります。
むしろチップセット側でPCI Express の上限が高かったとしても、物理的にレーンがなければ使えません。
よって、チップセットはそこまでメモリのオーバークロックをしない場合は、気にする必要はありません。
オーディオチップ
PCオーディオを本格的にされる方は、外付けのDACを使用され、そこそこ気にかける場合はサウンドカードを使用されてきました。
近年はマザーボード側のオーディオチップが進化してきているためサウンドカードはあまり使用されないようになってきています。わざわざDACを使用するほどではない場合は、現在良いオーディオチップのマザーボードを選ぶのがおすすめです。
有名なハイエンドオーディオチップとしてはRealtekのALC1220などがあります。ミドルクラスではALC892などが有名です。
サウンドカードは電源がPC内部のものとなるため、ノイズが乗りやすくなるため、わざわざ購入するくらいなら、外付けのDACにS/PDIFから光デジタル出力したほうが良いと思います。
フォームファクタ(サイズ)
使いたいPCケースに入るかどうかを決めるのがフォームファクタです。
フォームファクタとはExtended ATX、ATX、Micro-ATX、Mini-ITXと呼ばれるサイズになります。
左側にいくほど大きなサイズとなります。
上の図では手の長さが21cm程度となっています。
Extended ATXは規格上は305 x 330mmですが、現在販売されているExtended ATXのほとんどは305 x 270mm程度になっており、ATXよりやや大きい程度です。
ご覧のとおりMini ITXは手を広げた長さより小さく、17cm x 17cmであり、かなり小さくコンパクトなPCを組むことができます。
小さなボード上に必要な機能を盛り込むため、比較的高価なパーツを使用しており、機能の割には高めの値段になります。
VRMフェーズ
ちょっと自作PCについて分かり始めたころに気にかけがちなのがVRMフェーズ数です。
VRMフェーズのVRMとは、Voltage Regulator Module(電圧レギュレーターモジュール)の略で、CPUに供給する電源をコントロールしています。
CPUにとっては発熱が敵です。
できるだけ発熱を抑え、低消費電力で同じ性能を出したいというのが設計の根底にあります。
CPUの仕事は計算を処理して結果を返すことです。
消費電力は電流x電圧ですから、低い電流、低い電圧で結果がわかれば嬉しいのです。
1回の計算処理で流れる電流下げ止まります。
高い周波数でたとえば1秒間に5x10^9=50億回計算すれば電流はその50億倍になります。
クロック周波数をあげると電流は高くなります。
改善できる点は、低い電圧で同じ計算結果が得られることです。
あとで説明しますが、低い電圧で高い電流を安定して作り出すことは大変です。
CPUの使用率が上がっても発熱を抑えながら安定して電源を供給できるマザーボードは高額になります。
それを決める大部分がVRMフェーズの数と品質になります。
CPUは動作電圧が1.2V以下(1.0V, 0.8V)で、マザーボードに供給される電圧(12V, 5V, 3.3V)よりも低くなっています。
VRMはその一定の電圧でCPUに電流を送っています。
降圧チョッパ回路
この電圧を下げる回路が特徴的で、降圧チョッパ回路を元にしています。
降圧チョッパ回路ではコイルを直列に、コンデンサを並列に配置し(ダイオードも並列)、電流をON-OFFと高速でスイッチすることで、狙った電圧に下げています。
このやり方で大容量の電流を流そうとすると、スイッチを流れる電流が大きくなりますが、スイッチを担うMOSFETは電流が大きくなるほど電力損失が大きくなります。またスイッチングの周波数をあげるほど電力損失(スイッチング損失)が大きくなります。
CPUが100%使われるような処理がはじまるとCPUの消費電力は上がります。
(CPUの使用率とは、CPUのスレッドが走っている時間です。1秒あたり100ms走っていれば10%です)
各スレッドが動作している最中の電圧は一定です。
CPUの使用率が変わると、流れる電流が変わります。
必要とされる電流が変わるごとに対応するために、多くの蛇口が必要だと思ってもらえば大丈夫です。
大きなパイプ1つで蛇口の締め具合だけで電流量をコントロールしようとすると、問題が起こります。
降圧チョッパ回路のスイッチング損失が大きくなり、効率が悪くなってしまうのです。
もちろん大容量のコンデンサが必要となり、その1つのコンデンサへの負荷が大きくなり寿命が短くなること、発熱が大きくなることも問題です。
マルチフェーズ同期整流回路
そこで登場するのがマルチフェーズ同期整流回路です。
降圧チョッパ回路ではスイッチングのたびにギザギザに電圧が上下しますが、これをタイミングをずらして複数並行におけば、より滑らかに同じ電圧を出力可能となります。
いくつ並行に降圧チョッパ回路を置くかが、VRMフェーズ数になります。
部品が増え、制御の精度も高くなるため高額になりますが、発熱を抑え、安定して高電流を供給できるようになります。
どれだけ安定して電源電流を供給できるかは、VRMフェーズ数と各降圧チョッパ回路のコンデンサの静電容量に依存します。
目に見える部分はフェーズ数ですので、一般的には
フェーズ数が多いほど安定して電源を供給できると言われます。
オーバークロックなどをする場合は、必要とされる電流が高くなるため、VRMがしっかりしたものが必要となります。
VRMの上部にはヒートシンクがついています。VRMの数が増えるほどヒートシンクの数も多いので、1つ1つが同じサイズのヒートシンクだとすると冷却能もそれだけ高くなり、高電流にも対応可能になります。
ゲーミング程度の使用であれば、VRMフェーズの数をそれほど気にする必要はありません。だいたい5個以上あれば十分といえるでしょう。
事前にCPUを100%で使うことが頻繁にあると予測できる方は12個以上の多フェーズ数のマザーボードを選ぶと良いでしょう。
USB等のインターフェイスが充実しているか
実際の利用ではUSB 3.2や3.1、thunderbolt 3、USB type-cなどがあると嬉しいですよね。
高いマザーボードであるほど、インターフェイスが充実しています。
ただしGPUを使用する場合は、HDMI, Display Port, DVI-Dなどのディスプレイ用の出力は不要といえるでしょう。
PCオーディオで光出力する場合はS/PDIFが必要になります。ほとんどのマザーボードでついています。
--- 此処から先はあまり気にする必要はありません。 ----
NIC(ネットワークカード)
ネットワークインターフェイスカード(NIC)は、コンピューター間で通信を行うためのICチップです。
インターネットに接続する際は、外部のコンピューターと通信する必要があるので、このNICを通してデータが行き来します。
99%の人はPCでインターネットに接続すると思いますので、NICが壊れると大変困ります。
昔のコンピューターは計算機でしかなく、外部と接続することはあまり考慮されていませんでした。
そのためインターネットと接続するにはネットワークカードという拡張カードが必要でした。
それがマザーボード上で実現されるようになり、初期のころは安いNICは壊れることもありました。
(realtekの蟹焼きなど)
現在はマザーボード上のNICで壊れることはまずありません。
10Gb/sで通信できる10Gbイーサネット(10GbE)を利用するには、10GbEに対応したNICが必要になります。
10Gb/sと言われてもどれくらい速いか分からないと思いますが、
USB 2.0は480Mb/sですので、USB 2.0の20倍速く、USB 3.0は5Gb/sですのでUSB 3.0の2倍速い速度が可能です。
(実際はそこまで速くないですが)
普通の光回線は10GbEに対応していませんが、NURO光の10Gプランやauひかりの10Gプランでは実現可能です。
また外部ではなく社内でのLANやNASなどでは、10GbEを使用したいニーズがより強いかと思います。
10GbEのNASであればUSB3.0で接続するよりもNASのほうが速いことになります。
NASを利用するフォトグラファーや動画編集などにとってはありがたい機能でしょう。
10GbEを利用したい場合10GbE対応のマザーボードを使用する必要があります。
WiFi接続可能か
デスクトップPCでWiFi接続したい人は多くないかもしれませんが、あればルーターから遠いところに一時的に置けたりして割と便利です。
802.11ac対応のマザーボードが最近では結構普及してきています。
SLI / CrossFire対応(GPU複数使えるか)
ゲーミング用PCに複数枚のGPUを使用したい場合は、マザーボード側でも複数枚のGPUに対応している必要があります。
- NVIDIA製のGPUの場合はSLI(Scalable Link Interface)
- AMD製のGPUの場合はCrossFireやCrossFireX
と呼ばれています。
SLIやCrossfireでは、VRAM(グラフィックメモリ)はミラーリングされており、11GBのGPU2枚使っても実際にアプリケーションで使えるメモリは11x2=22GBとはならずに、11GBのままです。
じゃあ何をやっているのかと言うと、処理を分割してそれぞれ違う計算を役割分担させています。
たとえば、4つのGPUに異なるフレームのレンダリングを計算させたり、上下左右に分割してレンダリングさせたり、32ピクセル四方のブロックにわけて割り当てたりしています。
機械学習などの目的に複数枚のGPUを使用する場合は、SLIやCrossFireは関係なくなります。
CrossFireはオープン化されている規格であるため、ほとんどのマザーボードで対応されています。
また、CrossFireはGPU間のブリッジインターフェイスが不要です。
また、同じGPUでなくても動く場合が多いです。
しかし、ゲームによってはCrossFireに対応していません。
一方SLIは一部のマザーボードでしか対応されておらず、SLIブリッジと呼ばれるもので、物理的にGPU間を接続する必要があります。
一部のグラフィックボードではそもそもこのSLIブリッジ用のスロットがありません。
また、SLIでは同じGPUチップ同士でないと動きません。
最初からSLIで同じGPU(2080Tiなど)で複数枚のグラボを使う予定のある方はSLI対応のマザーボードを購入する必要があります。
それ以外の人は特に気にしなくてもよいでしょう。
マザーボードのメーカーごとの違い
マザーボードの大手メーカーといえばAUS、ARock、MSI、GIGABYTEがあげられます。
海外やサーバー用なのでは、Supermicro, Biostar, COlorful Group, ONDA, SOYO, Maxsun, Yestonなどもあります。
現在市場シェアではASUS, ASRock, MSI, GIGABYTEの順となっています。
ASRockはかつてASUSの子会社でしたが、現在はASUSとの資本関係はありません。
ASRockはかつては変態マザーボードと呼ばれる、オタク向けの仕様のマザーボードを販売していましたが、ASUSとの資本関係がなくなってからは、コストパフォーマンスの高いマザーボードを販売しており、多くの自作erがおすすめしています。
2006年ごろから15年ほどASUSは日本市場で最大手となっており、日本語のマニュアルや情報も多く安定感があります。
GIGABYTEはかつて(2005年ごろまで)は人気がありましたが、徐々に下降し、現在ではあまり人気がありません。